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堀井隆行のペットの気持ちColumn

住商アグロインターナショナル ハーツ事業部"
Vol.21

犬は目を見て話せば分かってくれる?

著者:堀井隆行
目を見て話せば犬は理解できるのか?

犬の行動カウンセリングやしつけ相談などで飼い主さんと話していると、愛犬に止めてほしいことがあるときに、「愛犬の目を見て叱る(注意する・説教する・諭す)」という飼い主さんが比較的多いです。これは、人間の親が子どもに“やってはいけないこと”を教えるときのイメージで、犬に対しても行うのではないかと私は考えています。それでは、目を見て話せば犬は“やってはいけないこと”を理解できるのでしょうか。

残念ながら、いくら目を見て話しても犬に人間の言語を理解することはできません。これは、「目を見ているから・いないから」という次元の問題ではなく、人間の言語(文法や語彙など)を理解する能力そのものがないのです。つまり、犬の目を見て話しても、話の内容は伝わらず、犬は飼い主の行動から読取れる雰囲気によって「攻撃的な雰囲気で怖い」、「親和的な雰囲気で嬉しい」、「相手の意図が理解できず混乱」などの受け取り方をするわけです。例えば、自分には理解できない言語で外国人に話しかけられたときをイメージすると犬の気持ちを少しは想像できると思います。外国人が何を話しているのかは分からないけれども、友好的に話しかけられているのか、攻撃的に話しかけられているのかが何となくわかることもあれば、いったいどうしてほしいのか全く分からなくて困ることもあるでしょう。そして、相手の意図とは違う理解をしてしまっていることもあるでしょう。このように、犬の目を見て話したところで、何かしら伝わることはあっても“やってはいけないこと”を理解させるためには意味を成しません。

犬の目を見ているから起こる誤解

犬には話している内容は伝わらないものの、目を見ているからこそ伝わってしまうことがあります。それは、「あなたに注目していますよ」ということです。犬に“やってはいけないこと”を伝えたいときに、犬が恐怖を感じるほどに射るような目で見ていれば「危険な注目」として何かしらの抑止力になるでしょう。しかし、多くの飼い主は比較的温和な目で犬を見るので、「親和的な注目」として犬に伝わってしまいます。一般的に犬は飼い主からの注目を求める動物なので、“やってはいけないこと”を伝えたいときに犬の目を見ると、「親和的な注目」というご褒美を犬に与えることになるので逆効果です。

吠えられても注目しなければ、いけない行動は減る。

 例えば、飼い主がテレビを観ていて犬に注目していないときに、ケージから出してほしくて犬が吠えたとします。このときに、飼い主が犬の目を見ながら「こら~、吠えたらダメでしょ。ご近所の迷惑になるんだから。シーだよ。シー。」と注意して、またテレビを観はじめます。また犬が吠えます。飼い主はまた同じ様に注意します。結局は、これが繰り返されていきます。つまり、①吠えると飼い主の注目が獲得できる、②吠えずに大人しくしているときは飼い主の注目が獲得できない、というコントラストが明確なので、飼い主の意図(吠える行動を止めたい)とは裏腹に“やってはいけないこと(吠える行動)”が増えていくわけです。これは、飼い主の行動に対する犬の大きな誤解と言えるでしょう。誤解を招かないためには、目を見る・声をかけるなどの反応をしないことが大切です。「注目するからいけない行動は増える⇒注目しなければいけない行動は減る」ということだと覚えておきましょう。

適切に犬の目を見て話しかけましょう

犬の目を見ながら、笑顔で優しくなでてあげる。

犬の目を見て話しかけることが全く無意味なわけではありません。犬が望ましい行動をしたときや、犬と穏やかに時間を過ごすときなどは「親和的な注目」が役に立ちます。とくに、これまで犬の悪いところにばかり注目していた場合は、それを犬の良いところに注目するように変えるだけでも、望ましい行動が増え、相対的に望ましくない行動は減っていきます。また、犬と見つめ合うことでお互いに幸福感を感じることもできます。コツとしては、シチュエーションごとに短いフレーズの言葉で話しかけることが効果的です。犬には文法も語彙も理解できないですが、音のフレーズとシチュエーションを結び付けて学習することは可能です。例えば、穏やかに犬の目を見て「○○ちゃんはいい子だね~」、「○○ちゃんは可愛いね~」、「そうそう、それでいいんだよ~」などと話しかけながら、笑顔で優しくなでてあげると、犬にとっては嬉しい・楽しいシチュエーションのフレーズとして学習されます。また、犬が膝の上に乗りたそうにしているときに、目を見て「お膝に乗る?」と話しかけてから乗せていれば、犬にとってはお膝に乗ることができるシチュエーションのフレーズとして学習されます。

このように、適切な場面で愛犬の目を見て話しかけることは、愛犬の望ましい行動を増やすことができ、お互いに幸福感を感じることができ、飼い主さんと愛犬の合言葉(コマンド)をつくることができます。皆さん、上手に愛犬に活用してみてください。