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堀井隆行のペットの気持ちColumn

住商アグロインターナショナル ハーツ事業部"
Vol.10

「犬のトイレのしつけは叱らない!」

著者:堀井隆行
犬のトイレの失敗は叱るとなおるのか?

 犬のトイレの失敗について飼い主さんから相談を受けるとき、その多くが「トイレを失敗したときに“叱ってもなおらない”」と訴えます。叱り方は、叩く、怒鳴る、大きな音を出す、失敗した排泄物に鼻を押し付ける、諭す、など様々です。いずれの叱り方も本やWeb、口コミなど何かしらの情報源がある場合が多いですが、犬のトイレの失敗は叱ると本当になおるのでしょうか。

 学習の理論上は、「“トイレではない場所で”排泄をする⇒叱られる(悪い結果が起こる)」という理解が犬に得られれば、トイレの失敗は減っていきます。しかし、肝心なことは、「犬はこのように理解するのか?」という点です。まず、トイレの失敗から“時間が経ってから”叱っても、叱られたこととトイレを失敗したことの因果関係を理解できる犬は、まずいないでしょう。では、時間が経っていなければ(いわゆる“現行犯”であれば)、犬は理解できるのでしょうか。残念ながら、それもあまり期待できません。現行犯で叱られることで、排泄と叱られることの因果関係は理解しやすくなるでしょうが、叱られた原因は「トイレではない場所で」の部分にあるということを理解する犬は極めて少ないです。大多数の犬は、「“飼い主さんの目の前で”排泄をする」ことを叱られたのだと理解し、飼い主さんに見つからないように隠れて排泄するようになります。言葉を理解できない犬には、叱られた理由を詳しく説明することができませんから、犬の理解を訂正してあげることもできません。そういう意味では、諭すように叱っても効果が得られるはずがありません。さらに、根本的には、「犬がトイレの場所を覚えている」という前提がなければ、犬が「自分はトイレではない場所で排泄をした」という理解をするはずもありません。このように、犬のトイレの失敗を叱っても、なおる可能性は極めて低いといえます。

犬のトイレの失敗を叱ってはいけない?

 犬のトイレの失敗を叱ってなおることは稀といえども、可能性があるなら試す価値があると思う人もいるでしょう。しかし、叱ることで効果が得られないだけでなく、弊害が起こることを知っておく必要があります。まず、前述したように飼い主さんの目の前で排泄をしなくなることは、その後のトイレトレーニングを困難にします。正しいトイレの場所を教えようにも、目の前で排泄してくれないことには、教えようがありません。次に、叱られることで排泄行動そのものが減っていくことがあります。一見すると失敗が減ったようにも見えますが、実際には生理的な限界まで排泄を我慢するようになっていくということです。過剰な排泄の我慢は、膀胱炎などの病気を引き起こす危険性があります。さらに、叱られることそのものがストレスになり、生活の質(QOL)が下がり、過剰に吠えるなどの他の問題行動が発生することもあります。

叱ると隠れてトイレを失敗するようになることもあるため淡々と排泄物を片付ける

 これまでは、「叱られた(悪い結果が起きた)」と認識した犬の話でしたが、飼い主さんが叱ったつもりでも、叱られたとは認識しない犬もいます。多くの飼い主さんは、可愛い愛犬を痛めつけたり・怯えさせたりするほどに叱ったりしないものです。つまり、“優しく叱る”わけですが、その程度では「叱られた」と犬が認識しない場合が多いのです。むしろ、「飼い主さんに注目してもらえた(良い結果が起きた)」と犬が認識してしまうことが多く、トイレの失敗を止めるつもりが、ますます“その場所で”排泄をするようになってしまいます。こうなってしまっては本末転倒です。これらのように、トイレの失敗を叱ることには効果がないどころか、多くのリスクがあるので、叱りたい気持ちをグッと抑えて、叱らないようにしましょう。

失敗したらどうすればいいのか?

 「叱らないならどうすればいいの!?」という声が聞こえてきそうですが、ずばり「淡々と排泄物を片付けること」です。犬に対しては何も反応せず(犬を見ない、声をかけない、触らない)、ただ冷静に排泄物の片付けだけをしてください。肝心なことは、排泄をしたことによって、犬自身に良いことも悪いことも起こらないことです。そして、大前提として失敗に対処するのではなく、トイレトレーニング(正しいトイレの場所を教えること)をしっかりすることに力を注いでください。とはいうものの、トイレの失敗の原因は、正しい場所を覚えていないことだけでなく、学習によって不適切な場所での排泄が定着してしまうことや生活上のストレス、疾患など様々です。長年悩んでいる飼い主さんは、一度専門家による愛犬の行動カウンセリングを受けることをお勧めします。なお、トイレトレーニングの基本は、正しい場所で排泄をしたことにご褒美を与えることです。また、寝床とトイレの場所を離すなど、排泄に適した環境を整えることも大切です。トイレトレーニングの詳細についてはまたの機会にご紹介できればと思います。