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堀井隆行のペットの気持ちColumn

住商アグロインターナショナル ハーツ事業部"
Vol.15

問題行動の予防につながる適切な社会化とは

著者:堀井隆行
よく聞くのにあまり意味が知られていない
「社会化」という言葉

 犬を飼っていると、Web・テレビ・雑誌・書籍・ペットショップ・ドッグトレーナーなど様々な情報源から「子犬の社会化」や「社会化不足は問題行動の原因」など、“社会化”という言葉を聞く機会が多くありませんか。しかし、「社会化とは?」と聞かれたときに正確に答えられる人は、そう多くはいません。“社会化”は「見聞きする機会は多いけれど、よく知らない言葉」なのです。それでは、社会化とは何なのでしょうか。

 “社会化”とは、「動物が発達・成長するとともに、自分がおかれた(おかれる)生活環境に適応するために必要な行動反応を適切に学習していく過程」を意味しています。つまり、一緒に生活する仲間、外敵、安全あるいは危険なものや場所などの認識から適切なかかわり方まで、“生きていくうえで必要なことを学ぶ”のです。犬の飼育場面では、犬や人に慣れさせることだけが社会化だと思われがちですが、他にも学ぶことはたくさんあります。また、単独性の強い猫の飼育場面には、社会化はないとも思われがちですが、あらゆる動物に社会化はあります。とくに家族の一員として生活する犬や猫の場合、犬社会・猫社会だけでなく、生活を共にする人の社会への社会化が重要になります。

社会化期を過ぎたらもうダメ?

 動物には社会化に適した時期があります。それが“社会化期”です。社会化期の動物は、未知のものごとに遭遇しても、怖がらずに興味を示し、受け入れやすいという特徴をもっています。一方で、一旦危険だと判断すると、長期間(場合によって一生)受け入れなくもなります。犬では生後3週齢から12週齢、猫では生後3週齢から10週齢が社会化期とされています。この時期に、将来も見越して必要な経験をさせる必要があり、それが不足すると成長後に問題行動を引き起こす原因になると言われています。しかし、お気づきのとおり、ちょうど子犬や子猫を家庭に迎える頃です。場合によっては、家庭に迎える前に社会化期が終わってしまっていることもあります。さらに、ワクチン接種の関係で経験させられることに制限ができます。どうすればよいのでしょうか。社会化期を過ぎたらどうにもならないのでしょうか。

 確かに、犬では14週齢、猫では10週齢までにまったく人と接触がなければ、その後も人を受け入れなくなるなど、ある条件がそろうと取り返しがつかなくなることもあります。しかし、多くの場合は社会化期の経験のみで社会化が決定づけられるわけではなく、その後1歳程度までの間の経験によっても犬猫は社会化されるのです。もちろん、できるだけ社会化期のうちに様々な未知の経験をさせたほうが、犬猫が受け入れやすいことに間違いはありませんが、仮に少し過ぎてしまっていても、諦めずにできるだけ早いうちに社会化に取り組んでほしいのです。

どうすれば社会化できる?

 飼い主が犬や猫に社会化しなければいけない内容としては、①人や犬、猫などの生物に対しては、その存在を受け入れ、適切なコミュニケーションスキルを学習する、②全身を触られることを受入れ、ブラッシング・シャンプー・歯磨きなどのケアを受入れられるようにする、③ドライヤー、掃除機、ドアチャイム、パトカー・救急車のサイレン、子どもが騒ぐ声などの生活環境中の音刺激を無視できるようにする、④急な人の動き、傘を開く動き、乗り物の動きなどの生活環境中の動くものを無視できるようにする、⑤階段やエレベーターなどの構造物、人工芝などの床面の感触、家庭内にある物などを受入れられるようにする、などなど数多くあります。大前提として、子犬・子猫が安心・安全に生活できる環境を整え、心身の安定を図っておくことがとても重要です。また、社会化は経験することで達成されますが、たくさん経験させればよいというものでもありません。肝心なことは、“良質な経験をさせること”です。例えば、犬に慣れさせようとたくさん犬がいるドッグランの中にいきなり子犬を放り込むと、逆に犬を怖がるようになることも多いです。それよりも、犬同士のコミュニケーションが上手な1頭の犬と十分にコミュニケーションをするほうが効果的です。他にも、掃除機に慣れさせようと、子犬や子猫の目の前で何度も掃除機をかけ続ければ、多くの犬猫が掃除機を怖がるようになります。まずは掃除機をみせるだけという弱い刺激から徐々に慣れさせていかなければいけません。つまり、何事も無理やりに経験させてはいけないということです。フードなどを適切に活用して、“嬉しい・楽しい”経験をさせることが飼い主から犬猫への社会化のアプローチとして重要なのです。適切な社会化は、その後10年以上の愛犬・愛猫との生活を素晴らしいものにしてくれますから、子犬・子猫を迎える飼い主さんは、時期を逃さず楽しく社会化ができるよう、専門家の適切な指導を受けながら取り組むことをお勧めします。

まずは掃除機をみせるだけという弱い刺激から徐々に慣れさせる