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堀井隆行のペットの気持ちColumn

住商アグロインターナショナル ハーツ事業部"
Vol.13

猫とマタタビ

著者:堀井隆行
猫はなぜマタタビに酔うのか?

 「猫に木天蓼(またたび)」ということわざがあるように、猫がマタタビを好んで舐めたり、噛んだり、食べたりすることで酔ったようになることは、日本人にとって有名な話です。具体的に猫は頭をふったり、顔や身体をこすりつけたり、寝転がって身体をくねらせたり、という雌猫の発情時に似た行動を起こします。このときに、よだれを垂らしたり、しきりに鳴いたりすることもあるので、「陶酔状態」と表現されます。興奮の程度は様々で、気持ち良さそうにしているだけの場合もあれば、激しく興奮して飛び跳ねたり、引っかいたり、蹴ったりする場合もあります。マタタビに対する反応は、多くの場合5~15分程度続き、その後しばらくは、まったりと幸せそうな状態が続きます。どうやら猫にとっては好ましい状態のようですが、なぜ猫はマタタビに対して“酔う”ような反応をするのでしょうか。

鋤鼻器(じょびき)でフェロモンを感じる

 マタタビの葉や実などのすべての部分には、β-フェニルエチルアルコール(バラの香りの主成分/猫はよだれを垂らす)、マタタビラクトン、アクチニジンという3つの揮発性物質が含まれていて、それが猫に作用していることが知られています。この中でも、とくにマタタビラクトンが有名で、猫に陶酔状態を引き起こす中心的な物質です。マタタビラクトンは、上顎の前歯の裏側辺りにあるフェロモンを感じ取る器官である鋤鼻器(じょびき)で受け取るため、猫にフレーメン行動を引き起こします(詳しくはコラムVol.5「犬と猫の嗅覚」を参照)。つまり、フェロモンのように脳に直接的に作用することで、発情した雌猫のような行動を引き起こしているのではないかと考えられています。ちなみに、アクチニジンは猫以外にイヌ科の動物などにも陶酔状態を引き起こす作用があるそうです。

猫を酔わせるのはマタタビだけ?

 日本人にとっては、猫を酔わせる植物として日本を中心に自生するマタタビが有名ですが、ヨーロッパやアメリカなどではキャットニップ(イヌハッカ、チクマハッカ)というハーブのほうが有名です。マタタビ(マタタビ科)とキャットニップ(シソ科)は違う植物ですが、キャットニップにはマタタビラクトンと同じように作用するネペタラクトンという物質が含まれています。また、ハーブ類ではバレリアン(西洋カノコソウ)、身近なものではキウイフルーツ(マタタビ科)などにもマタタビと同様に猫を酔わせる作用があります。意外にも色々な植物が猫を酔わせるのです。
猫を酔わせるのは良いですが、健康面への影響は気になるところです。キャットニップは猫には依存性もなく、無害だといわれています。しかし、長期間の使用によって、周辺環境を認識する能力が低下するという報告もあり、副作用については定かではありません。いずれにせよ、強い興奮作用があるので、マタタビやキャットニップなどを与える際には、愛猫の体調と反応をよく観察しながら、適度に与えることをお勧めします。適量については、例えばマタタビの粉末では1回に0.5g未満ですが、反応には個体差があるので指に少量をつけて様子を見ながら愛猫が興奮しすぎない量を探ってください。

マタタビに反応するのは遺伝のせい?

 マタタビやキャットニップに対する反応は、イエネコだけでなくトラやライオンなどほとんどのネコ科動物で起こります。しかし、すべての個体が反応するわけではありません。マタタビやキャットニップに反応するのは50~70%程度で、反応に関連する遺伝子を持っている猫だけが反応するようです。なぜこのような遺伝子が存在するのかが気になるところですが、よく分かっていないのが現状です。また、去勢をしていない雄猫が強く反応しやすいこと、離乳前の子猫や恐怖を感じている猫などは反応が鈍いことも報告されています。市販の猫用製品にはマタタビ入りのものが様々ありますが、前述のように猫だからマタタビやキャットニップに必ず酔うわけではないので、愛猫が反応するかをまずは試してみてください。